滞納家賃(賃料債権)は誰が相続するのか?(in 岡山)
被相続人が亡くなったときに、被相続人の貸アパートの賃借人が家賃を滞納していた場合、滞納家賃(賃料債権)は、各相続人が相続分に応じて賃料債権を取得します。
司法書士 錦織 祐貴
司法書士 錦織 祐貴

滞納家賃(賃料債権)は誰が相続するのか?(in 岡山)

 

 

A子さん

A子さん

 

被相続人が亡くなったときに、被相続人の貸アパートの賃借人が家賃を滞納していた場合、滞納家賃(賃料債権)は誰が相続するの?

 

にしこり

にしこり

 

各相続人が相続分に応じて賃料債権を取得します。
貸アパートを相続した人だけが、賃料債権を取得できるわけではありません。

 

 

 

 

 

被相続人が亡くなったときに、貸アパートの賃借人が家賃60万円を滞納していた場合、貸アパートを相続した長男が60万円の賃料債権を取得するのでしょうか?

 

にしこり

にしこり

 

アパートの家賃は前払いが一般的です。
3月分の家賃は、2月末までに支払います。

 

貸アパートの賃料債権を相続するのは通常考えにくいですが、賃借人が家賃を滞納していた場合は賃料債権を相続します。

 

賃料債権は各相続人が相続分に応じて取得する

一見すると、長男が貸アパートを相続しているので、長男が賃借人に滞納家賃全額請求できそうです。

 

しかし賃料債権は、各相続人が相続分に応じて取得します。

 

60万円の滞納家賃(賃料債権)について下記のように取得します。(子どもがいる場合の相続分についてはこちら

 

・配偶者 30万円※ 
※60万円×2分の1(法定相続分)

 

・長女 15万円※ 
※60万円×4分の1(法定相続分)

 

・長男 15万円※ 
※60万円×4分の1(法定相続分)

 

各相続人は他の相続人の同意を得なくても賃借人に、自分が相続した賃料債権を請求することができます。

 

例えば、長女は、他の相続人の同意を得なくても賃借人に15万円を請求することができます。

相続財産は2種類ある

相続財産には、「遺産分割の対象となる財産」と「遺産分割の対象とならいない財産」があります。

 

「遺産分割の対象となる財産」を取得する場合、相続人が複数いるケースでは、必ず遺産分割(遺産分け)が必要です。

 

一般的に相続財産として思いつくものは、不動産、現金、預貯金、株式、自動車、貴金属類などがありますが、これらはすべて「遺産分割の対象となる財産」であり、相続人が複数いるケースでは、必ず遺産分割(遺産分け)が必要です。

 

しかし、相続財産の中には「遺産分割の対象とならない財産」があります。

 

先ほど述べた賃料債権は、「遺産分割の対象とならない財産」であり、遺産分割をしなくても各相続人が相続分に応じて取得します。

 

遺産分割の対象とならない財産」の代表的のものとして下記のものがあります。

  • 被相続人が知人にお金を貸していた場合
    貸金債権
  • 被相続人が商売をしていた場合
    売掛金
  • 被相続人が消費者金融を利用していた場合
    過払金(払いすぎた利息)

いずれも、遺産分割をしなくても、各相続人が相続分に応じて取得します。

 

賃料債権が例外的に遺産分割の対象となる場合

先ほどの例で、長男が賃借人に滞納家賃60万円全額を請求したい場合はどうすればいいでしょうか?

 

賃料債権は、遺産分割の対象とはなりませんが、相続人全員が遺産分割の対象とすることに合意すれば遺産分割の対象となります。

 

配偶者、長男、長女が合意すれば、遺産分割により、長男が賃料債権60万円を取得することは可能です。

 

 

・被相続人が亡くなったときの滞納家賃(賃料債権)は、各相続人が相続分に応じて取得する

 

・「遺産分割の対象とならない財産」も相続人全員が遺産分割の対象とすることに合意すれば遺産分割の対象となる

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。