自筆証書遺言は、自宅で手軽に書くことができる遺言です。
以前は、遺言の全文を手書きで書くことを要求されていましたが、平成31年1月13日以降は、遺言書に別紙として添付する相続財産目録については、遺言作成者が自書しなくてもよくなりました。
A子さん
不動産が30個もあれば、すべて手書きで書こうとすると大変だもんね。
具体的には、パソコンで作成した書面、他の人に代筆してもらった書面、不動産の登記事項証明書、通帳のコピーを相続財産目録として添付することができます。
自書によらない相続財産目録を添付する場合は、偽造を防止するために、遺言作成者が、相続財産目録1枚ごとに署名して押印します。
もし、自書によらないで相続財産目録を両面に記載した場合は、両面に署名して、押印する必要があります。
A子さん
「相続財産目録に押印する印鑑」は、「遺言書本文に押印する印鑑」と同じ印鑑を押すんだよね?
意外なことに、「相続財産目録に押印する印鑑」と「遺言書本文に押印する印鑑」は同一である必要はありません。
遺言書作成者の印鑑であれば、同一の印鑑でなくてもよいのです。
偽造防止の観点から見れば、当然「相続財産目録に押印する印鑑」と「遺言書本文に押印する印鑑」は同一のものを使うべきですが、方式としては厳格すぎるということで同一の印鑑を用いることは要求されません。
また、遺言書本文と相続財産目録が別紙の場合、ホッチキスで留めたり、契印したりする必要はありません。
相続財産目録は自書する必要がありませんが、一つだけ注意点があります。
まずは、民法第968条2項を読んでみてください。
第968条2項
前項の規定(作者注: 自筆証書遺言は全文を自書してください)にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない
赤字のところを注目してほしいのですが、
「相続財産目録を添付する場合は、相続財産目録には自書することを要しない」
と記載があります。
添付とあるので、「遺言書本文」と「相続財産目録」はそれぞれ別の用紙に記載されている必要があります。
もし、相続財産目録を添付せずに、1枚の用紙に「遺言書本文」と「相続財産目録」を記載しようとする場合は、相続財産目録は必ず自書しなければなりません。
例えば、通帳のコピーの余白に「当該財産は、妻〇〇に相続させる」と自書して遺言書を作成しても自筆証書遺言の要件を満たさないことになります。
にしこり
相続財産目録は、自書しなくてもよいと思い込んでいると思わぬ落とし穴にはまります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。