A子さん
親子が交通事故で亡くなった場合、どっちが先に亡くなったか分からないときの相続ってどうなるの?
にしこり
死亡の前後が分からない場合は、同時死亡の推定(同時に死亡したものと推定する)が働くので、お互いがお互いを相続しません。
では、解説していきます。
まず、大前提として、誰かが亡くなったときに相続人になれる人は、誰かが亡くなった時点で生きていなければなりません。
上記の例のように被相続人が亡くなる前に長女が既に亡くなっていた場合は、長女は、被相続人の相続人になることはできません。
そのことを踏まえて
父と長男が、同じ事故で亡くなってしまい、どちらが先に死亡したか分からない場合は、父の相続、長男の相続はそれぞれ誰が相続人になるでしょうか?(登場人物は父、母、長男、父の弟です。)
少し考えてみてください。
答えは、
父の相続は、母と父の弟が相続人になり、長男の相続は、母が相続人になります。
なぜなら、民法には、「どちらが先に死亡したか分からない場合は、同時に死亡したものと推定する」という条文があるからです。
これを『同時死亡の推定』といいます。
その結果、父と長男は、お互いがお互いを相続しません。
父の死亡時に、長男は生きていないので、父の相続について長男は相続人になりません。
また、長男の死亡時に父は生きていないので、長男の相続において父は相続人になりません。
そのため、父の相続においては、母と父の弟が相続人になり、長男の相続においては、母が相続人になります。
にしこり
相続人の範囲、相続割合について分からない人は、相続人の範囲と相続割合は民法で決められている(in岡山))を読んでください。
父の相続において、法定相続分は、母が4分の3で父の弟が4分の1です。
つまり、父の相続において母が全額相続できない可能性が高いということです。
仮に父の遺産が現金1億円の場合、父の弟は、2,500万円を相続する権利があります。
(父の弟が遠慮して、母に「あなたがすべて相続してください」という可能性もゼロではありませんが)
上記のような事故があった場合は、母はなんとか父の遺産を全額相続できないのでしょうか?
父の弟に相続させない方法を3つ紹介します。
法律には、語尾が「みなす」となっている場合と、「推定する」となっている場合があります。
一見同じように見えますが、両者の意味は全く異なります。
語尾が「みなす」となっている場合は、反論は許されません。
しかし、「推定する」となっている場合は、一応明確なものとして定めているだけなので、反証を挙げて推定を打ち破ることが可能です。
先ほどの事例の『同時死亡の推定』は、反証を挙げれば、推定を打ち破ることが可能です。
例えば、父は、事故現場ですぐに亡くなったが、長男は、搬送された病院で亡くなったことを証明すれば、同時死亡の推定は打ち破られ、父の遺産は、一旦母と長男が相続して、その後に母は長男の遺産を相続するので、父の弟が、父の遺産を取得することはありません。
もし、孫がいた場合は、父の遺産は、長男に代わって孫が相続します。
これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と言います。
民法887条2項
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡~(一部省略)によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる
相続の開始以前とは、同時に亡くなった場合も含むので、今回の事故のケースは代襲相続が可能です。
父が、遺言で『母に全財産を相続させる』と書いていた場合は、父の遺産はすべて、母が相続するので、父の弟が相続することはありません。
しかし、父が、遺言で『長男に全財産を相続させる』と書いていた場合は、父の死亡時に、長男は生きていないので遺言の効力は発生しません。
よって、父の相続においては、母と父の弟が相続人になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。