銀行が合併したけど、抵当権の登記はどうなる?【岡山の司法書士が解説】
銀行の合併で抵当権の登記はどうなる?岡山の司法書士が、抵当権移転登記が「必要なケース」と「不要なケース」をわかりやすく解説。住宅ローン完済前の方は必見です。
司法書士 錦織 祐貴
司法書士 錦織 祐貴

銀行が合併したけど、抵当権の登記はどうなる?【岡山の司法書士が解説】

 

こんにちは。司法書士の錦織(にしこり)です。

 

住宅ローンを完済したら、まず行う手続きの一つが『抵当権の抹消登記』です。
今回は、その中でも少しややこしい「金融機関が合併した場合」についてお話しします。

 

登記の現場でもよくある質問ですので、これから住宅ローンを完済される方や、不動産の名義変更を考えている方の参考になればと思います。

住宅ローンと抵当権の関係

住宅ローンを組むと、通常、ご自宅(建物と土地)には抵当権が設定※されます。
これは、金融機関が「もし返済ができなくなった場合」に備えて、不動産を担保に取っている状態です。

 

※もう少し正確に言うと、住宅ローンを組む人と金融機関が抵当権設定契約を結び、その内容に基づいて司法書士が法務局に登記を申請します。

 

そして、住宅ローンを完済すると、この抵当権は消滅するので、「抵当権抹消登記」を申請します。

 

金融機関が合併した場合、登記はどうなる?

ここからが本題です。
住宅ローンの返済中に、銀行などの金融機関が合併することがあります。
「この場合、何かしら登記申請をする必要があるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

 

実は、登記申請が必要かどうかは、抵当権者が「存続会社(=合併後も残る会社)」なのか、「消滅会社(=合併でなくなる会社)」なのかによって異なります。

 

では、それぞれの場合を見ていきましょう。

 

抵当権者が【消滅会社】の場合 → 抵当権移転登記が必要

吸収合併が行われると、消滅会社のすべての権利・義務は存続会社に承継されます。
債権(住宅ローン債権)が消滅会社から存続会社に引き継がれると、その債権に付随する抵当権も同じように移転します。

 

そのため、抵当権者が消滅会社であった場合には、抵当権移転登記が必須です。

 

抵当権者が【存続会社】の場合 → 抵当権移転登記は不要

一方で、もともと存続会社が抵当権者であった場合には、合併によって抵当権者が変わることはありません。
したがって、抵当権移転登記は不要です。

 

抵当権者が「存続会社なのか」「消滅会社なのか」によって、手続きが異なるという点がポイントです。

 

具体例:三菱UFJ住宅ローン保証㈱の合併ケース

具体例として、三菱UFJ住宅ローン保証株式会社(抵当権者)をみていきましょう。

 

2023年7月1日、
「三菱UFJ住宅ローン保証株式会社(存続会社)」が
「三菱UFJローンビジネス株式会社(消滅会社)」を吸収合併しました。

 

そして、合併日に、三菱UFJ住宅ローン保証株式会社は社名(商号)を変更して、「三菱UFJローンビジネス株式会社」という社名になりました。

 

ではこのケースで、抵当権移転登記は必要でしょうか?
少しややこしいですが、どうなると思いますか?

 

 

答えは「不要」です。

 

三菱UFJ住宅ローン保証株式会社は、合併における存続会社であり、合併により法人格は継続しています。

 

社名が変わった(三菱UFJ住宅ローン保証株式会社⇒三菱UFJローンビジネス株式会社)だけで、会社自体は同一だからです。

 

見た目は「会社が入れ替わった」ように感じるかもしれませんが、実態としては「社名が変わっただけ」なので、抵当権者は変わっていません。

 

よって、抵当権移転登記は不要です。

 

今回は、合併後に存続会社(三菱UFJ住宅ローン保証株式会社)が社名(商号)を変更し、その新しい社名が消滅会社(三菱UFJローンビジネス株式会社)と同じであったため、少し混乱を招いたかもしれません。

 

このように、「合併」と「社名変更」が同時に起こると、書類上では別会社のように見えるため、注意が必要です。

 

まとめ

抵当権移転登記の必要性は、下記の図のとおりです。

 

抵当権者 合併後 抵当権移転登記の要否
存続会社 会社が存続 不要
消滅会社 会社が消滅 必要

 

抵当権者の社名(商号)が変わっていても、会社が存続している限り、抵当権移転登記は不要です。

 

最後に

「合併」と「社名(商号)変更」が重なると、専門家でも少し混乱することがあります。

 

住宅ローンの完済は、人生の大きな節目です。
手続きに少しでも不安を感じたら、早めにご相談ください。
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